第三分科会

写真提供:福岡市 

タイトル

「強レーザー場分子科学の基礎と応用:反応する分子の可視化と制御」


 紹介文


フェムト秒レーザーパルスを集光することで,原子や分子内のクーロン場に匹敵する大きな電場をもつ強いレーザー場を創り出すことができます。強レーザー場における原子や分子はトンネルイオン化やクーロン爆発,アト秒光パルス発生,光ドレスト状態(=光の衣をまとった状態)の形成など,弱い光の場ではみられないエキゾチックな振る舞いを示します。この分科会では(1)強レーザー場における原子分子過程の基礎と,(2)超高速化学反応ダイナミクスの可視化と制御への応用について,最新の研究成果を交えながら学びます。初学者にも配慮して進めますので,近年著しく発展を遂げてきた「新しい光の使い方」に関心がある方は奮ってご参加ください。


    講義概要(予定)

    A. 強レーザー場とは?

    B. レーザー場中の原子分子

多光子吸収/共鳴増強イオン化

    C. 強レーザー場過程

トンネルイオン化/電子再衝突/高次高調波発生/光ドレスト状態/クーロン爆発

    D. 反応する分子の可視化: 分子ダイナミクス

レーザー自己電子線回折/高次高調波分光/クーロン爆発イメージング

    E. 反応する分子の可視化: 電子ダイナミクス

 高次高調波分光/トンネルイオン化イメージング

    F. 化学反応制御

レーザー波形成形/単分子反応/多体反応

分科会担当者コメント

担当: 野村 絢也

 第三分科会では名古屋大学の菱川明栄先生にお越しいただき,強レーザー場中の原子・分子ダイナミクスの基礎から,さらにその応用である,光による物質制御と可視化について講義をしていただきます。

 レーザー光が誕生して以来,光を制御する技術は近年飛躍的な発展をみせており,今ではピコ秒以下の極めて短い時間幅をもつパルスレーザーの発生が可能となっています。このレーザー光の短パルス化は,超高速で進行する原子・分子の「化学反応ダイナミクス」を実時間で捉える方策を与え,また一方では,短パルス化に伴う光強度の増大に起因して,弱い光の場では観測されない様々な非線形現象(光ドレスト効果,クーロン爆発,etc.)を引き起こし,分子科学に新たな潮流を生み出しています。

 講義では,この強レーザー場中に生じる新奇現象を理解するための土台である,強レーザー場中原子・分子の量子力学理論から始め,続いてその応用である量子状態の可視化と制御の原理について,先端研究を交えながら解説していただきます。原子・分子のようなミクロな物質の運動を如何に可視化し,また,制御するか,その入門として講義を楽しんでいただけたらと思います。

 光は原子・分子の性質を探る「プローブ」であり,さらには,その量子状態を自在に操る「ドライバー」でもあります。この分科会で,光を通じて見る原子・分子の世界を体験してみてはいかがでしょうか。